第12回通常大会記念講演「広島市の危機管理対策」講演要旨
講師 広島市消防局防災課 課長 斉藤浩氏
広島市消防局防災課斉藤と申します。本日は出前講座ということでお呼びいただきましてありがとうございます。
3月11日に東北地方太平洋沖地震が起こりました。M9.0観測史上最大といわれ、巨大な津波が北海道、東北地区、関東太平洋側にかけておそいました。今朝方内閣府のHPを見てみますと、6月2日現在で死者が約1万5千名、行方不明者の方が8千3百名、避難者の方も9万9千名余りとたいへんご不自由な生活をされていると思います。改めまして心よりお見舞い申し上げます。
平成7年の阪神淡路大震災以降、鳥取西部地震、芸予地震、宮城十勝での地震、平成17年には中越地震、福岡西部沖地震等毎年のように地震が起こっています。この10年間で震度5弱以上は73回記録し、今年の3月に未曾有の大地震が起こっています。
東日本でこのような大きな地震が起こるまでは東海地震と東南海地震の発生確率が高いということで、広島市はこれに対する対策を進めてきました。東海地震の発生確率はこの30年以内に87%、広島にも影響を及ぼす南海、東南海地震は50〜70%と予測されています。東南海と南海地震が起こった時に広島にも津波が来るであろうと予測されています。芸予地震は40%、広島市で起きた場合、一番大きな被害になるのは五日市断層によるものですが、周期が長いので不明となっています。己斐断層も不明、岩国断層は高くて2%くらいとなっていますが、阪神淡路大震災における発生確率が発生前は0.02〜8%であったということで、予断は許さないと言えます。
そういった災害に対して、国、県、市町がどういった対応をするかというと、国は首相をトップにした中央防災会議があります。平成17年には地震防災戦略というものを作っています。切迫性が高い地震があることから被害の軽減を具体的数値目標を上げて戦略を作りました。それに基づきまして地方公共団体も地域目標を掲げています。広島県は平成20年に防災戦略を作り、広島市では阪神淡路大震災後すぐに「災害に強いまちづくりプラン」を作りました。このときは震災対策のみでしたが、6.29豪雨災害を受けて風水害対策等も内容に入れて平成17年に改訂しています。国、県の動きに関連し、平成19年に広島市の地震災害想定調査をし、それをまちづくりプランの中に反映させています。その後平成21年に再改訂して、それに基づいて防災対策を行っています。改訂版では、対象を芸予地震からよりひどい地震とされる五日市断層による被害想定になっています。
「災害に強いまちづくりプラン」として3本の柱、1番目に災害に強い都市構造の形成―街を不燃化、耐震性のある建物にかえていく。2番目に災害に強い組織体制の整備、3番目に災害に強い市民活動の推進―町内会を単位として自主防災会を中心に市民の方にも防災への意識を高く持っていただき、協力していただく。この3本の柱を基に防災体制を進めています。
「災害に強いまちづくりプラン」の中に市民と行政の役割分担についても書いてあります。阪神淡路大震災で明らかになりましたが、行政だけでは大規模な都市災害にすべて対応することはできないということです。よく言われることですが、がれきの中に埋もれている人を助けたのは自衛隊でも消防でもなく隣近所の人だったというのが8〜9割だったといわれています。地震による被害で最もおそれることは建物の倒壊による圧死です。地震が起こったときに余裕があれば使っている火は消すと延焼火災による被害を防止できます。市民の役割としては、震災対策として一番効果があるのは家の耐震化です。五日市断層の地震で亡くなられる方のほとんどは建物の倒壊による圧死とされています。家具の転倒や落下防止、これもかなりの率でけがや死亡される方がおられると思います。屋外でいえば、広告物の落下防止、ブロック塀の生垣化や補強、自動販売機の転倒防止策を取っていただく。市はそういった動きを支援するようになっています。
阪神淡路大震災も今回の東日本大震災の時も避難場所が問題になりました。阪神淡路大震災の時は決められたルールがなかったため、住民が勝手に学校に入って避難生活を始め、そのうち住民が中心になって自治組織を立ち上げ、長い避難所生活を乗り切ったと聞いています。それを教訓にして広島市ではそれぞれの小学校を中心に生活避難場所を指定しており、現在212くらい指定場所があります。自主防災会が中心となりマニュアルを作り、救助訓練、応急手当の講習等もしています。地元である場合は参加されると参考になると思います。あと、非常持ち出し品の準備をしていただきたい。最低3日分、用意していただきたいと思います。携帯電話は非常につながりにくくなりますから、安否確認の方法を事前に決めておいていただくと、いざというときに混乱はないと思います。
避難の仕方としては、地震が起こったらすぐに、近くの公園でも駐車場でも畑でもいいので、いったん広くて安全な場所に逃げてください。それから自宅が無事であれば自宅に帰っていただく。自宅がとても住めるような状況ではない場合、生活避難場所で生活することになります。ここには備蓄物品等がありますので、食事も布団もあります。最悪の場合は広域避難場所に逃げてもらうことになります。
備蓄品については必要最低限のものを、市と県でそれぞれ1日分ずつ備蓄しています。3日目以降は他地域からの応援物資でしのいで行くことになります。備蓄品は小学校に500人分、あとは市民球場や西消防署等に集中備蓄しています。
集中備蓄倉庫(広島市民球場)写真
平成19年度に広島市が行いました地震による被害想定調査の結果についてお話しします。
想定される地震は歴史的にくり返し発生し、将来発生する可能性が高い地震、国が長期評価を行っている98の断層、五日市断層とか己斐断層です。それから広島市から遠くても被害を及ぼす可能性が高い地震、これが東南海、南海地震です。
震度は東南海、南海地震で市内の一番高いところで震度5強、己斐断層地震で震度6強、五日市断層地震で震度6強から7、芸予地震で震度6弱と予測されています。津波は広島県が津波浸水予測図を公表していますが、福山、尾道あたりが津波の高さ1m、広島市の方に行くに従い小さくなり、広島市で60pと予測されています。60pの津波が来た場合に市内がどれだけ浸水するかというと、沿岸部の低い所で0.1〜0.5m、観音沖の方で2mくらいつかると言われています。これは東南海、南海地震の場合、広島市の想定震度が震度5強で沿岸部にある堤防が機能すると想定され、浸水被害が起きないとされているからです。津波の到達時間ですが、地震が発生して2時間半くらいは引き波でそれ以降、波が押し寄せてきて、だいたい4時間で最大の津波の高さ60pを記録するだろうと言われています。60pだからと安心せず、地震の大きな揺れを感じたら海から離れて遠くに逃げてください。注意報はだいたい津波の高さ0.5m程度の時に出ますが、必ず海から離れて、近くのショッピングセンター等高い所に逃げてください。
広島市の地震想定調査結果は広島市のHPでも見ることができますので参考にしてください。最後になりますが、われわれ地方公共団体には住民の生命、身体、財産を守る義務がありますが、住民の方も防災に寄与するよう努めなければならないということが災害対策基本法の中に書いてあります。非常持ち出し品の用意や家具の転倒防止とかは努めとして、していただきたいと、お願いしておきたいと思います。